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日本郵便が、冷凍弁当などを自宅へ届ける宅配サービスに参入した。食品事業のクラダシと組み、電話とインターネットに加え、全国約2万カ所の郵便局窓口でも注文を受け付ける。ネット通販に慣れていない高齢者を主な対象とし、価格は1食あたり約700円を想定する。買い物や調理が負担になっている高齢者のほか、単身世帯や共働き世帯への供給拡大も狙う。郵便局の店舗網と既存の配達網を、食の分野に転用する試みである。

引用元: 日本郵便、冷凍食宅配に参入 全国約2万局の窓口でも注文可能(Kyodo News / Daily Sports)

分析・見解

勝負どころは「商品」より「注文の入口」にある

冷凍弁当の宅配は、すでに多くの事業者がある。味や栄養設計での差は、年々つきにくくなっている。今回の参入で目新しいのは、郵便局の窓口を注文の入口にした点だ。

高齢者向けの宅配食では、商品を知ってもらうことと、注文方法が分かることが最初の壁になる。スマートフォンの操作に不安がある人は、どんなに良い商品でも買えない。窓口で職員と話しながら頼める仕組みは、この壁を直接取り除く。

1食約700円が示す価格帯の意味

700円前後という価格は、コンビニ弁当より少し高く、既存の高齢者向け宅配食の中心価格帯と重なる。送料や容器、冷凍保管のコストを含めると、食材と製造に回せる原価は限られる。

目安として、売価700円のうち配送や販売の手数料を引くと、製造側に残る金額は500円前後になる可能性が高い。そこから原価率を4割程度に抑えると、食材と包材に使えるのは200円程度だ。この制約の中で、塩分や栄養バランスの基準を守る必要がある。

全国一律の配送網が抱える温度管理の難しさ

郵便局網の強みは、人口の少ない地域にも届く点にある。一方で、冷凍品は配送中にマイナス18度以下を保つことが前提だ。山間部や離島では配達に時間がかかり、不在時の再配達も増える。

高齢者宅では、受け取った後に冷凍庫へ入れる作業や、庫内の空きが問題になる。冷凍庫が小さい家庭では、一度に数日分しか受け取れない。配送の頻度が増えれば、その分コストも上がる。

先行事例との違いと、今後の見通し

生協の個別宅配や、配食専門事業者は、配達員が手渡しし、見守りも兼ねてきた。日本郵便は郵便や荷物の配達員がすでに地域を回っており、同じ発想を応用しやすい。ただし、冷凍品は専用の保冷箱や車両が要るため、既存の配達に単純に相乗りはできない。

今後は、見守りや自治体の配食支援との連携が成否を分ける。食品の販売にとどまらず、地域の生活を支える仕組みとして位置づけられるかが問われる。

ビジネスへの影響

製造側は「少量多品種」と「低原価」の両立を迫られる

全国の窓口で売る商品は、品目を絞らないと現場が混乱する。そのため、各品目の製造ロットは大きくなりやすい。一方で、減塩や刻み食、やわらか食など、高齢者向けの仕様違いも求められる。

製造事業者は、共通の下ごしらえを増やして仕様の違いを最後の工程に寄せるなど、工程の設計を見直す必要がある。商談では、1食あたりの原価、最低ロット、賞味期限の長さを数字で示せる事業者が有利になる。

小売・外食・介護事業者が今できる備え

自社で宅配食を扱う事業者は、注文の入口が電話とネットだけで足りているかを点検したい。店舗での受注や、家族による代理注文を用意するだけでも、取りこぼしは減る。

冷凍設備の面では、受け入れ時の温度記録と、解凍後の扱いを明記した案内を用意しておくことが信頼につながる。まずは自社の1食あたり原価と配送費を並べ、700円帯で成り立つかを試算することを勧める。