ニュースの概要
かつお節の主原料である冷凍カツオの落札価格が最高値を更新した。背景には、漁獲量の減少という供給側の事情がある。そこへ中東情勢に絡む燃料費の上昇や、海上・陸上の輸送コストの増加が重なった。原料の確保そのものが難しくなるうえ、手に入れるための費用も膨らむ二重の打撃である。かつお節メーカーは採算の悪化に直面し、価格を上げざるを得なくなる可能性がある。影響は一つの加工品にとどまらず、だしを使う外食、総菜、冷凍食品、小売の各段階へ波及するとみられる。
引用元: 冷凍カツオが最高値、不漁と中東情勢でかつお節原料に打撃(FNN Prime Online)
分析・見解
不漁と燃料高が同時に襲う、二重の値上がり構造
今回の高騰は、単純な需要増ではない。獲れる量が減り、運ぶ費用も上がるという、供給側だけの問題である。需要が強くて価格が上がる局面なら、売り手は強気に出られる。しかし今回は逆で、加工業者は高い原料を買わされるだけで、売値に転嫁できるかは別問題となる。
カツオは回遊魚で、海水温や黒潮の流れで漁場が大きく動く。年ごとの振れ幅が大きく、数年続けて不漁になることもある。この性質が、価格の急変動を生みやすくしている。
かつお節が弱ると、だし文化全体に響く理由
かつお節は単なる食材ではなく、調味料の骨格である。めんつゆ、白だし、ふりかけ、総菜、冷凍の麺や丼の具まで、だしの旨みの元として広く使われる。原料が一割上がっても、最終商品への影響は小さく見えるかもしれない。だが、使用量が多い業務用では、年間の仕入れ額が数百万円単位で変わる。
ここに独自の見方がある。冷凍食品は値上げしにくい商品だ。売場で価格が比較されやすく、特売の対象にもなりやすい。つまり、原料高の負担は小売ではなく、製造側の利益に吸収されやすい。だしを使う冷凍食品ほど、静かに利益が削られていく。
過去の水産高騰と比べて見える、今回の違い
過去にも、サンマやスルメイカの不漁で原料が高騰した例がある。そのときは、代替魚種への切り替えや輸入品の増量で対応できた。だが、かつお節は原料の代替が難しい。味の個性が強く、別の魚で同じ品質は出しにくい。
また、2022年前後の食用油や小麦の高騰では、原料高と円安が重なり、多くの食品が値上げに踏み切った。今回は燃料と物流の上昇が加わる点で似ている。違いは、水産物は在庫の積み増しで価格を平準化しにくいことだ。冷凍で保管できるとはいえ、冷凍庫の容量と電気代という別のコストが発生する。
来期の仕入れ契約と代替だしの動きが焦点になる
今後は三つの動きが焦点になる。第一に、加工業者が長期契約や共同購入で調達を安定させる動き。第二に、かつお節の使用量を減らす、または昆布や煮干しなどと組み合わせる配合の見直し。第三に、小売側が価格改定を受け入れるかどうかである。
短期では、価格が高止まりする可能性が高い。燃料価格が落ち着いても、不漁が解消しなければ水準は戻らない。業界は、安く買える時期を待つのではなく、高い前提で採算を組み直す局面に入ったといえる。
ビジネスへの影響
原価率を再計算し、値上げの順番を決める
まず、自社の商品でかつお節やだしがどれだけ原価を占めるかを洗い出したい。製造原価の中でだしの割合が数パーセントでも、利益率が低い商品ではすぐに赤字へ傾く。商品ごとに、原料が一割上がったときの利益額を試算しておくとよい。
値上げは全商品を一斉に行うより、利益が薄い商品から順に進める方が現実的である。内容量を少し減らす、だしの配合を見直すといった方法も選択肢になる。ただし、味が変わると常連客が離れるため、試食と顧客への説明は欠かせない。
仕入れ先の分散と在庫計画で、急な高騰に備える
調達先が一社に偏っていると、価格交渉で不利になる。複数の仕入れ先を持つか、年間契約で価格幅を決めておくと安定しやすい。冷凍品は保管できる点が強みだが、冷凍庫の容量には限りがある。安いときに買い込むなら、保管料と電気代も含めた総額で判断したい。
外食や小売の担当者は、メニューや棚割りの柔軟性も確保しておきたい。だしを多く使う商品が不利になった場合に、別の主力商品へ売場を振り向けられる準備が要る。原料高は一時的な波ではなく、仕入れの考え方を見直す契機として捉えるべきである。
