ニュースの概要
一般社団法人食品冷凍技術推進機構(FFTech)が、2026年3月に運用を始めた「凍結装置性能認証制度」で最初の認証を出した。9月中にサラヤ、ゼロカラ、ホシザキの3社が、あわせて5機種で認証を取得している。この制度は、業務用の凍結装置の性能を共通の基準で確かめ、導入する企業が機器の能力や使いどころを見比べやすくすることを狙うものだ。冷凍食品の工場では、凍る速さや温度の管理が、味や食感、歩留まり(=原料から無駄なく製品にできた割合)、衛生、電気代にまで響く。これまでカタログの数字だけでは比べにくかった装置選びに、業界団体の物差しが加わった形である。
引用元: 業務用凍結装置で世界初の性能認証 3社5機種が取得(Excite News)
分析・見解
カタログの数字が横並びで読めなかった事情
業務用の凍結装置は、これまで「1時間に何キロ凍らせられるか」といった能力表示で比べられることが多かった。ところが、この数字は測り方で大きく変わる。投入する食品の初めの温度、厚み、凍らせ終わりの中心温度をどこに置くかで、同じ機械でも結果は違ってくる。メーカーごとに試験条件が異なれば、カタログを並べても公平な比較にはならない。
食品の凍結で肝心なのは、水が氷に変わる温度帯(おおむね氷点下1度から5度前後)をどれだけ早く通り抜けるかだ。ここをゆっくり通ると氷の結晶が大きくなり、細胞を傷める。解凍したときにうま味を含んだ汁(ドリップ)が流れ出す原因になる。つまり速さは、味や歩留まりに直結する数字である。
燃費表示の統一に似た、用途ごとの物差し
自動車の燃費が、メーカー独自の測り方から共通の試験方法に切り替わったとき、消費者は初めて車種を同じ土俵で比べられるようになった。凍結装置の認証制度にも、同じ役割が期待できる。
ただし、凍結の世界は車より複雑だ。ホタテのような小さな食材と、総菜の入った大きなトレーでは、向いている方式が違う。そのため、速さの順位をつけるだけでなく、どんな食品に向くかという用途適合性を示せるかが、制度の価値を左右する。公表された要約からは評価の細目まで読み取れないので、ここは今後の公開情報を待ちたい。
顔ぶれが示す、凍結装置の裾野の広がり
最初の認証を得たのは、サラヤ、ゼロカラ、ホシザキの3社だ。ホシザキは厨房機器、サラヤは衛生分野で広く知られる。大型の専用ラインだけでなく、飲食店のセントラルキッチンや中小の食品工場に向けた機器でも、性能を示す必要が出てきたと読める。凍結が一部の大手の技術ではなく、幅広い現場の設備になりつつある表れだろう。
一方で、まだ見えない点も多い。試験の条件、認証の有効期間、機器を改良したときの再審査、海外の規格との関係などだ。「世界初」という看板が実質を伴うかどうかは、ここで決まる。
認証は買う側にとっての共通言語になる
独自の見方を一つ挙げると、この制度の本当の受益者は、設備に詳しい大企業よりも、専門の技術者を持たない中小の事業者だろう。大手は自前で試験凍結を重ねられる。小さな工場や新規参入の企業は、営業担当の説明を信じるしかなかった。認証番号を仕様書に書けば、「この条件で、この性能」を前提に見積もりを取れる。
ただし、認証は装置単体の成績であり、現場の使い方までは保証しない。庫内への詰め込みすぎや扉の開けすぎで、結果は簡単に落ちる。物差しができたからこそ、使い方の管理が差を生む時代になる。
ビジネスへの影響
見積もりの段階で認証と試験条件を確認する
これから凍結装置を入れ替える、または増設する企業は、見積もりを依頼するときに二つ尋ねたい。認証を取得しているか。取得しているなら、どんな試験条件の数字か。条件が自社の食品と近ければ、そのまま参考にできる。遠ければ、数字は目安にとどめる。認証がない機種でも、劣るとは限らない。取得の予定を聞けば、メーカーの姿勢も見える。
OEMやPB(=小売店の自社ブランド)を発注する側も、委託先の工場がどんな凍結装置を持つかを聞く機会が増えるだろう。認証機器の有無は、委託先を比べる材料の一つになる。
認証がなくても使える自社用の比較表をつくる
認証の対象機種は、いまのところ5機種にとどまる。当面は、選択肢の大半が未認証だろう。そこで、自社の主力商品で試験凍結を依頼し、同じ項目で記録しておく。見る項目は、中心温度が目標に届くまでの時間、解凍後のドリップの量、1回あたりの電力量、洗浄にかかる時間の四つで足りる。
試験では、原料の状態をそろえることが大切だ。同じ日の同じロットで、機種ごとに同じ量を凍らせると、差がはっきり出る。この表があれば、認証の有無に関わらず比較できる。
導入後の温度記録まで投資に含めて考える
装置の性能が良くても、現場で温度が記録されていなければ、衛生管理の証拠にならない。機器の価格に加えて、記録の取り方、校正(=測定器のずれを直すこと)、点検の手間を含めた総費用で判断したい。電気代は、歩留まりが1ポイント上がるだけで、収支が逆転することもある。
また、メーカーには、認証を取った条件での使い方と、自社の使い方の差を聞いておくとよい。性能が見えやすくなる今こそ、投資判断を総費用で行う好機である。
